※一部訂正(9月7日)
(つづき)
イカ喰い道の探求
土地のものを食べる。これは旅の楽しみであり、その町を知る最良の手段でもあり、地元の人と接する大切な機会でもあります。ひとつ例をあげてみましょうか。
函館人にとってイカは珍しい食材ではありません。しかし、旅先ではその土地のイカを食べてみるべきだと思っています。
◆海藻おしばでつくったイカ。住吉漁港で採集したアナダルスという海藻をもちいている。ちなみにイカの足8本+触腕2本を忠実に再現。
真イカ(スルメイカ)は1年かけて日本周辺の海を回遊しています(南方で生まれて、成長しながら北上し、産卵のために再び南下します)。おもに日本海を往来するのですが、勢いよく北方へ泳ぎ着いたイカは、宗谷海峡を通ってオホーツク海へ出て行きます。津軽海峡へ進路を変えて、太平洋や噴火湾にたどり着くイカもいます。
日本海のイカ漁は針で釣り上げる漁法ですが、太平洋側(道東沖・東北沖)では網ですくいとる漁法が一般的です。函館(道南)沖ではイカ釣り漁がおこなわれているため、魚体への傷やストレスが少なく、生け簀イカ(つまり生きているイカ)など鮮度の高いイカが豊富で、それが「函館のイカがうまい理由」のひとつです。すいません。イカのことを書き始めると止まらなくなります。そのわりに、このブログで函館のイカがうまい理由(というか主張)をほとんど書いてきませんでしたが。
イカ刺しの薬味に注目してみます。定番のワサビ、僕がいちばん好きなおろしショウガ、父の田舎で食べた辛み大根、うまいけど(体への)罪悪感にあふれるイカゴロ乗せ、などさまざまです。
食べ方の作法もいくつかあります。細く長く上品に並んだイカ刺しもあれば、山盛り食べ放題おかわり自由、イカソーメンのような工夫もあります。いちばんうまいイカ刺しの食べ方は、「しょうゆを垂らして泡立つまでかき混ぜる」ことだと主張する人にも出会えるでしょう。イカひとつでも、いろんな驚きや出会いがあり、それが旅の会話をぐんぐん弾ませます。
※イカとイカ漁に関しては、足立倫行さんの名著『日本海のイカ』(情報センター/新潮文庫、いずれも絶版もしくは在庫切れ。電子書店パピレスで購読できる)を読んでもらいたい。
(つづく)
※訂正箇所:函館(道南沖)のイカ漁が「網」ですくう漁法と誤解される表現をしていた箇所を訂正。失礼しました。
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