知内町の国道沿いにて。
◆ひりっと乾いた寒風に吹かれる大根。
◆漬物用の大根は丈が長い。
これって品種が違うんですかね。それとも長く伸びるように栽培するんでしょうか。
◆大根の菜っ葉。油炒めも好き。
◆これも漬け物にするんでしょうか。
漬け物を食べると祖母を思い出す。
実家の勝手口にあった大きなプラスチックの樽には、祖母が仕込んだ漬け物が入っていた。
子どもの私には、漬け物は異臭を放つ物体でしかなく、
大樽のある勝手口にはあまり近づきたくなかった。
食卓テーブルに漬け物が入った小鉢が置かれると、それとなく祖母の方へ押しやっていた。
そんな漬け物をおいしそうに口へ運ぶ祖母の姿を、私は不思議に思いながら見ていた。
祖母が亡くなったのは三月の末だった。
日陰にはザラザラした雪がほんの少しだけ残っていたが、
日中の風はすっかり暖かな春の風はすっかり春でだった。
夕方、知らない人から電話があって、うちのトイレでおたくのお婆さんが倒れていると伝えられた。
あわてて母と私はその家に向かった。
救急車が呼ばれて、病院に着くころには意識は失われ、そうしてあっとういうまに死んでしまった。
たぶん、お葬式とはあわただしいものなのだろう。
中学生の私は、今週は塾の春期講習に行けないなぁと思うくらいが関の山だったが。
気が付けば桜も散り、初夏を迎えようとしていた。
泣き通しだった母は、ようやく落ち着いて遺品の片づけを始めていた。
そんなとき、家の裏口から漬け物樽が出てきた。祖母が漬けていたものだ。
樽のふたを開けてみると、漬け物は発酵から腐敗へ変化していた。
「おばちゃんの最後の味だったのにね」と、弟の声が勝手口の方から聞こえた。
母はまた泣いたようだ。
私はことさらに「くさい」と悪態をついて、樽を見ようともしなかった。
心の中では、もうちょっと早く僕が見つけてあげれば良かった、などと思いながら。
お酒の味を覚えて、いっぱしの講釈を垂れるようになった二十代後半になって、
ようやく漬け物がうまいと思えるようになった。
もし、いま祖母の漬け物を食べることができたら、
きっとうまいうまいと連呼して、喜ばすことができるだろうなと思う。
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