日記:4月1日(ばばちゃんの思い出)

4月1日(水)
東京の弟からメールが来てた。
昨日のばあさんの命日の文章を読んだようだ。
備忘のために転載しておく。
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当時の自分は蚊帳の外で、全く実感湧かなかったよ。
家で電話番させられてたっけ。
でんわが来たら「キトクデス」って言えって、
意味もわからずに対応していた。

朝も普通だった。玄関を出るおばあちゃんを
ぼんやりとトイレに向かいながら見送り。
今にして思うとラストトークなんだけど、当然ぼんやりとして印象にない。

実感がわいたのは葬式のとき
(家に「来た」時点でもまだよく分んなかった)
坊さんの物悲しい読経を聞いたら、もの凄く悲しくなった。
というかなんか悔しくなった。
周りの参列者の、社交辞令的な悲しみかたに、
理不尽にも腹立たしく思っていた。
悲しんでいいのはあの家の自分たちだけだろ!
とかそんな感じ。

葬式中ずっと泣いてた気がする。読経に負けないように。
(かあさん曰く、この泣き声のおかげで、
 とてもいい葬式だったと。この前言われた)

記念日的なものを全く覚えない自分で、
もちろん昨日も意識の外だったけど、
この文章をもって自分なりの供養ということで。
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弟は小2だったのかな。
ばあさんの死亡確認が出た直後に父が病室に入ってきた。
たぶん、フェリーが函館港に着いて、すぐに駆けつけたんだろう。
俺は5000円札を渡されて先にタクシーで帰らされた。
運転手を相手に、ずいぶんあっさり死ぬもんですね、と話ていた。
あのころから、タクシーの運転手との会話が好きだったんだな。
家に着くと、弟がぽつんとソファーに座っていた。
俺は兄貴の絶対権力を行使して、仏壇の灯明を点灯せよと命令した。
恐がりな俺は、仏壇に近づくのをためらっていたから。
札幌のおばさんたちに電話して、「さっき、ばあちゃんが他界しました」と伝える。
思えば、末の弟はまだ生まれていなかったんだよな。
母のお腹の中にいて、その年の7月に生まれた。
俺は葬式で泣いたんだっけか。いや、泣いてないな。たぶん。
ただ、母を見ているのは辛かったが。

お昼。星野さんが仕事部屋に飛び込んできて、「函館海岸図があったよ。市内に。」と叫ぶ。
さっそく、箱館高田屋嘉兵衛資料館(末広町)に行ってくる。
あった。あった。何度か来ているのに、しっかり気に留めていなかった。
年代や場所の特定もおこなっている。
星野さんと話していたのと、それほど大きな差異はなかったが。
(この海岸図に関しては、別頁で改めて詳述する。)
この資料館は、高田屋関係資料はもちろんのこと、
幕末から明治・大正期の函館港における産業遺産が多数展示されている。
いままで、積極的にお勧めしてこなかった自分の不明を詫びなければいけない。
函館地元民も観光の皆さんも、ぜひ立ち寄るべき場所だ。
ちなみに、関連の書籍販売も充実している。
小沼健太郎編「明治の新聞に見る函館の有様(一)」を購入した(7500円)。
 本通中学のとき1年生の社会科を小沼先生に教えていただいた。
 先生の郷土史クラブも毎週楽しみだったなぁ。
 フィールドワークの楽しさを知ったのも、そのクラブでだった。

資料館の前にクルマを駐車して、あやうくパトカーに摘発されるところを回避。
新函館ラーメン マメさんで昼食。お客は僕ら二人だけ。
この店の海藻をつかったストレート麺の食感が好きで、
しかもオフシーズンは客がいなくてあずましいので、月1ていど食べている。
あんまり地元の人たちは立ち寄らないようだ。ちょっぴり観光価格だからかな。
って言っても、最近のラーメンは700円オーバーが平気になってるけど。
事務所に戻って机仕事。
夕方、NCVの一森さんから電話。金曜日の収録の件。
「なにか用意しますか?」「いえ、なにも。なりゆきでやりますから」
どんなテンションで収録に望むか決めかねている。
ただ、酔っぱらってまえば、大声でがなって笑ってるだけなんだけどさ。
23時、帰宅。めんどくさいのでコンビニ弁当。
「シャカリキ!」を最後まで読んで就寝。熱い自転車マンガだ。おもしろかった。

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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