糖尿病入院日記:7月10日(鶏肉の皮脂身の嬉しさよ)

7月10日(金)

とは言うものの、糖尿病での入院五日目。函館中央病院にて。

5時50分起床。昨夜は窓を閉めて寝た。明け方から強い雨と風。
気温16〜18度くらいがいちばん過ごしやすい。
朝、トイレに行くと俺の蓄尿セットがなくなっていた。
尿意を我慢しながら看護師さんに聞くと、昨夜で終了とのこと。
いちいちビーカーに入れるのが面倒で、小さな尿意は我慢していたのだが、
これからは思う存分に放尿できる。重畳なり。
尿は目盛りの付いた透明のビニール袋に溜めていく。たぶん満杯で2Lくらい。
幾人かの患者さんの尿備蓄パックが並んでいる。
どうしても、尿を袋に注ぎ込みながら、隣人尿と見くらべてしまう。
色が濃いと、ちょっと恥ずかしかったりして。

すっきりと放尿・快便の後に体重測定。102.8kg。それなりに減っているなぁ。
でも、腹も胸も二重あごも、とくに痩せた気がしない。
0.1トンを越えるクラスでは、10%くらい減量しないと見た目の変化はないようだ。

6時半、メールチェック。
NPO法人なちゅらす代表の赤石くんからメール。
 > お見舞いは
 > Hな本にしますね。
 > 食べものの制約が、ありそうなので・・・
 > しばらく
 > 白衣の天使と
 > たわむれて
 > ゆっくりしてくださいね。
お見舞いにエロ本ってのはデフォルトなんだろうか。
それとも、俺がエロと同類項なのか。もう4人に言われた。なんなんだ。早く持ってこい。
ありがとう。

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◆毎朝のお薬。これで朝だけだぜ。お腹一杯になりそうだ。
◆血糖と高血圧の薬。めまい(耳鼻科)の薬。

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◆充実の朝食タイム。味海苔かと思ったら焼き海苔だった。

7時45分、朝食。負け惜しみでなく、量には慣れた。
ご飯、白菜の味噌汁、さつま揚げともやしの醤油炒め、からし菜和え、焼きのり。

過食をふせぐコツとして、よく言われていることだが、なるほど見た目は大切である。
どんなに腹七分に慣れても、やはり量は少ないと思うし、
たとえどんなにご立派な料理でも、見ただけでは満腹にはならない。
しかし、これしかない、と非常な現実を視認すると、
これだけでなんとかやりくりせねばなるなまい、と思うものだ。
必然、食べるスピードは減速する。貪欲によく噛んで少しでも食べた気になろうとする。
5分で食べ終わるのは悔しいので、ちょっとインターバルを置いてみたりする。
お茶を飲んで、胃の中でメシがふくらまないかとたくらんでみる。
そうやって食べていると、
まぁ、これくらいなもんだろうと、心理的・胃の腑的にも納得できるのだ。

8時50分、昨日の午後から着手していた原稿を書き上げる。
デザイナーの和也さんにメール送信。
来週17日、道新(函館・道南版)に掲載される広告特集の読みもの。
海藻おしば」の紹介と函館開港150周年ネタ。
ペリー艦隊は箱館で海藻を採集し、標本=おしばをつくっている。
その標本はいまもハーバード大学に収蔵されているというお話。
川嶋昭二先生からお借りした書籍が役立った。

9時、病室に副院長が訪れる。体調はすこぶる良好とお伝えする。
入院生活も快適。退院後もメシを食べに通いたいくらいだ。
「ちょっと、ブログ・・・」...おっ、校閲が入るのか?
「書きすぎ。良く書きすぎだよ」。そっちか。でも正直に書いてるんだし。
健康食品の利用者コメントなんかとは違って、
(ほぼ)正真正銘、虚飾なしのユーザーコメントですから。
でも、本来は糖尿病の治療・訓練くらいで、入院なんかしてはいけないのかも。
要するに、あなたは自己管理なんてできないだろうから、強制入院しなさい。
そういうことなのである。
だからこそ、僕はこの2週間(予定では。)の体験を、
しっかり貪欲に吸収(知識と体験のカロリー制限はない)しなくちゃいけない。

9時半、皮膚科で足をチェック。15秒で水虫と診断。
「19歳の4月から水虫なんです」というセリフを用意していたが、言うヒマがなかった。
軟膏を処方していただく。痒くないけど、皮膚が剥がれてくるんだよね。
ちなみに、僕に水虫を授けてくれたのは、大学の寮の先輩でした。飯芽さん元気かな。

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◆空きベッド。

斜め向かいのおじさんが退院。昨日の退院した人もそうだったが、
病気を治して病院をあとにする人は、みな良い笑顔をする。
向かいのお爺さんもいつのまにか退院していた。
あっという間に、病室の先輩が3人ともいなくなった。
ということで、暫定ひとり部屋。差額ベッド料はナシ。

今週はふだんより仕事をしているので肩がこった。
俺しかいない病室でストレッチ。などをしているうちに昼飯、11時40分。

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◆明日の予定。15日には、もういちど7回採血が待ち受けている。

今日も食べようとしたWs先生の回診。
軽い運動の許可をもらう。できるだけ毎日、お散歩しようと思う。
検査データをもらう。明日、こんどは食後3回の採血だ。
痛いのは耐えるしかない。数値の変化が楽しみだ。

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◆ご飯、サラダ、鶏肉、ビーフン中華炒め。

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◆鶏肉。照り焼き。あぁ、鶏皮の脂身。ここでキミに会えるとは。
◆食事制限・食事療法の病人が、こんなに甘やかされて良いのだろうか。

Hakodadiさんのブログで、この入院日記を紹介してくれたようで。
  → HAKODADI Vol.2(IZA版)「糖尿病患者の貴重な入院記録
 > 今日で入院4日目。まだ10日間は楽しめそうだ。
 > (本人が途中で絶望のあまり無謀な脱走を図らなければだが)
くそ。余計な世話じゃ。ありがとうございます。

以前から思っていたんだけど、「糖尿病」という病名はひどい。
外国語の直訳なのかも知れないけれど、あまりに残酷な写実である。
糖尿病の合併症は血管に関するものが多いので、
血の病気の線で新たなネーミングを考えてほしいところだ。
以前、年上のフリーライター(いまは廃業)が、
「糖尿病はイヤだね。立ち小便したら、たちどころにアリが集まってくるんだぜ。」
と笑っていた。笑われるような病気になってしまいました。

ちなみに、人類が糖尿病を患ってきた最古の記録は、紀元前16世紀(3500年前)のエジプト古文書(パピルス)に書かれており、「体から生気が流れ出す病気」と説明されている。もっとも歴史のある病気のひとつだそうだ。しかし、糖尿病の原因(インスリンの不全)や治療法が発見されたのは19世紀後半から20世紀初頭にかけてである。
【参考文献:日本糖尿病学会編『糖尿病 治療の手引き』改訂第54班】

14時、糖尿病教室。ビデオに前田吟が出演してた。

15時、外出許可をもらってお散歩に。
一歩踏み出したとたん雨が降り出したので、
いったん病室に戻ってカメラを置いて再スタートする。
本町、杉並町、駒場通をまたぎ、白楊通を南下、時任町、人見通に入り、鈴かけ通を南下、的場町、日乃出町、高盛町、千歳橋で亀田川を渡り、千歳町、電車通りを北上し、堀川町、千代台町、本町。1時間ほど。
風が強く雨が降ったりやんだり。
千歳町「まる吉」の前で、天ぷらの香りにくじけそうになる。
電車通り沿いにある古美術・篆刻の店も気になる。
立派なもみあげをした店主が、店の前にイスを出して、
なにやらいわくありげな器でちびちびと茶を飲んでいた。
退院までには声をかけてみたい。

病室に戻ると新たな患者さんが入院していた。爺さんだ。よくしゃべる。
ひとり部屋は半日で終了。
夕方、一昨日から書いていた入院までの記録をブログにアップ。
今日はちょっと早めにブログ記事の整理を始める。

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◆キウイが続くなぁ。果物は瓜系とリンゴはダメを出してるからね。

17時35分、晩飯。早いのにも慣れた。コップに氷をもらいに行く。夕日がまぶしい。
ご飯(やわらかめ)、お麩の味噌汁、オクラの酢の物、平べったい焼き魚、海藻サラダ。
海藻はワカメとトサカノリか。うまいうまい。

アマゾンから本が届く。送付先を病院宛にしても、しっかり届く。
週刊文春で紹介されていた衿沢世衣子『シンプル ノット ローファー』。
とりあえずぱらぱらと読む。好感の持てる絵柄。
毎年のお仕事で、女子高校生のインタビューをしているのだが、
彼女たちの心理や興味や考え方に感心させられることがある。
だから、女子高生の日常を描くような作品は気になるのだ。

看護師さんから外出届を2通もらう。
明日の土曜日は15時から17時まで、
日曜日は糖尿病教室がないので昼食後から出かけるつもり。
事務所に行って、市立はこだて幼稚園の「海藻おしば」作品を完成させなくちゃ。

今日はここまで。
たまにはラジオを聞きながら、ベッドに寝ころんで本を読むことにする。
消灯という締め切りに追われる日々はストレスにならないのだろうか。
糖尿病の原因のひとつはストレスだという。明日、主治医に聞いてみようか。

【7月11日、一部改訂】

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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