糖尿病入院日記:7月16日(明日になれば気分は晴れる。)

7月15日(木)

さて、慢性高血糖症(糖尿病)による入院十二日目。
入院体験および治療の記録である。今日だけはフィクションだ。

体重測定101.4kg。
血圧測定156の85。

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◆朝食

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◆昼食

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◆夕食

17時40分、夕食を食べ始める。
18時、夕飯を食べ終わる。
18時40分ころ、食後の薬を飲み忘れていたことに気が付いて薬を飲む。
そう言えば、はて? 食前の薬を飲んだかどうか不安になる。
いつも置く場所に薬の空はない。ということは、薬を飲んでいないか、飲んで空を回収されたかのどっちかだ。病棟では飲み終えた薬の空を看護師さんが回収することで飲み忘れを防いでいる。

どうだったかなぁと記憶をたぐっているところに、
「高山さん、空を回収します。」と看護師さんが来た。
食後の薬の空を渡しながら、「僕は食前の薬を飲みましたかね?」
「そんなことは知りません。飲んだか飲まないかさえ分からないんですか?」
まぁ、飲んだか飲まないか記憶が定かではないから聞いてみたんだけど。
ここ数年、直近の記憶があやふやなことが多くて。それも特に重要なことが抜ける。
「あの飲み忘れたままにしたことは、これまでないと...」
「いえ、そんなことないですよ。2回目ですよ。」
ぴしゃりと言われる。そうだったな。
で、薬の飲み忘れシステムがあるから、
食べ始めているところで慌てて薬を飲んだことは、2回以上あった。

食事を目の前にすると、早く食べたいという意識が盛り上がってしまう。
恒例のメニュー写真の撮影も、2〜3度、忘れそうになったこともあった。
それにしても、ぴしゃりと言われてしまった。僕は怒られたんだろうか。それは曲解か。
まともに薬さえ飲めない僕に、叱咤激励をしてくれたのだろうか。
よくわからない心持ちになってしまった。
でも、僕は薬を飲んだかどうかについて、看護師さんに聞くしかなかったんだ。

うん。これは質問の仕方が悪かったんだろう。
「では、僕は薬の空をお渡ししましたか?」
「もらってないですよ。」
じゃあ、まぁ、飲んでいないんだろう。
それをチェックするための空回収システムなんだろうし。
ただ、その素晴らしいシステムも、記憶のあいまいな患者がボタンを押してみても(質問をしてみても)、そのボタンの押す角度や時間が異なれば効力を発揮しないようである。多くの人にとって簡単に使いこなせるボタンでも、それをうまく押せない人もいるかもしれない。俺が、そうなのかはわからない。入院も十日を越えて油断したのかもしれない。このまま退院しては、薬を飲み忘れて血糖コントロールに失敗するかもしれない。糖尿病と記憶障害の関係ついては、明日の回診で主治医に聞いてみよう。

はーー、でも、俺、入院して始めて暗い気持ちになったなぁ。
動悸がする。胃が痛い。表情が沈む。酒を飲みたい。逃げだしたい。
悔しいなぁ。悔しいなぁ。悔しいなぁ。悔しいなぁ。悔しいなぁ
俺、もし脳の血管でも破裂して、動くことも話すことも不自由になって、
でも、意識や思考は鮮明で、
自分ではどうしようもないってことだけは把握できる状態になったら、
自殺を望むだろうな。そればかり考えるだろう。
そして、自死さえも不随の状態では実行できない悲劇。この世でいちばんの恐怖。

早く退院したい。

今日はもう書けない。
楽しいことがたくさんあった日だったが、それは明日、空が晴れていたら書くことにする。

薬を欠かしてしまうほどの忘れっぽさだから、
明日にはきっとすべて忘れてるだろう。



※この文章はフィクションです。現実の人物・団体などに一切関係ありません。

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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