糖尿病入院日記:7月8日(病状が見えてきた)

7月8日(水)

そうはおっしゃるが、函館中央病院での入院三日目となった。

昨日の採血7発は辛かった。痛がりだからね。
21時、7回目の採血。もう手の甲はイヤですと伝える。
左腕。「細い針にしましょう」。あら、痛くない。幸せな気分で就寝。

やはり4時半に起きる。外は雨だ。雨音はショパンの調べ
お出かけしない日の雨降りは大好きだ。二度寝。6時10分に起きる。
目を覚ます直前、ずいぶんと大きめのイビキをしていた。
ふぐぅわがががが。
ちょっと恥ずかしくなって、咳払いとかしてごまかしてみたり。
ごまかせてないか。含羞は文化的生活において大切なことである。
血圧測定、190の132。
たぶん起きぬけは、睡眠時無呼吸症候群の影響で高いんじゃないかと。

昨日、地下の売店で購入した洗面器とボディーソープで洗顔。
あぁ、坊主で良かった。顔も頭も丸ごと洗ってしまう。
もみあげの手入れ。なぜか、ここだけ伸びるのが早いんだよな。
頭頂部の毛髪も、もう少しがんばれよ。

「高山さん、体重測定を忘れてますよ」と呼び出し放送。
忘れてました。104.2kg。でも、104kgちょうどで申告。
今日はすでにジーンズ(ベルト有り)に着替えていたので、
寝間着より200gくらいは多いだろう、ということで。

7時20分、メールチェック。
先月、丸善滝澤での番組収録で隣り合わせた神奈川の「たかやま」さんからメール。
ブログを見たとのこと。もうすぐDVDが届くと思うので。お楽しみに。

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◆神奈川のたかやまさん。右の人は今金町出身で東京在住。あれは6月9日、最高に楽しい酒でした。「函館酒場寄港 第3話」は7月19日までNCVでリピート放送中です。

東京の弟からもメールが来てた。どうやら徹夜明けのようだ。
彼は漫画雑誌の編集長である。遅筆の作家たちに泣かされてるんだろう。
くっくっくっ、泣け泣け。俺は編集者の気持ちはわからないことにしている。
お互いに因果な商売を選んだもんだ。

弟のメールから。タイトルは「びっくり」。
 > 入院してしまったとは。
 > 自分が20年近く前に入院した時は、
 > この世の終わりかというくらい絶望したものでした。
 > (ひと月は泣いて暮らした
 > まあそのうち諦めというかなんというか、
 > 狭い世界が自分の世界になり、
 > なんとなく特別な存在な気がして(そういう逃避?)
 > 慢性病棟の澱んだ怖さを退院後思ったものでした。
 > あとブログは超チェックしてますので
 > しっかり更新してください。
 > 採血のくだりは にやにやしたw
 > あれってほぼ 若い=下手、年配=上手い
 > 自分も手の甲から何度もやられましたわ。末端は痛い。

いや甘いな。採血に関する技術レベル(痛いか痛くないか)に関して、
年齢は絶対条件ではない。たぶん、刺すのが好きな看護師さんは上手なんだと思う。

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◆朝食。味噌汁が熱ければ満点だ。ま、病人食だから。

さて、朝食。ご飯、味噌汁(豆腐)、さば生姜煮、オクラおひたし、牛乳。
オクラの緑があざやかだ。よくよく噛んで食べる。
さば生姜煮は病棟内でも美味しい評判だったようだ。同意。
どうしても汁まで飲み尽くしてしまう。
外はけっこう強い雨が降っている。少し窓から吹き込んできた。

8時から「ふっくりんこ蔵部 田んぼブログ」の更新作業。
こちらも体調不良を理由に、ずいぶん放置してしまっていた。取材分が溜まっている。
PHSを使ってネット接続をしているのだが、
回線が細いので写真のアップロードに時間がかかる。
9時30分、血圧測定157の110。

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◆病室のテレビ。液晶ワイド。地上波+BS+CS、ぜんぶで18chもある。充実。
◆プレペイドカードによる精算方式。1時間で120円。

11時40分、お昼ご飯。
さて食べようと思ったら、主治医Ws先生の回診。

「血糖の数値は良かったです。いやいやいや、あの、悪いながらも良い方向に推移しているという意味です。食事療法の効果が大きいようですね。今後もう少し時間をかけて、食投薬もしくは自己注射が必要かを判断します。明日から積極的に血糖値を下げる薬を飲んでもらいますので。」

ほらね。へへへ。1日や2日の入院で変化はしないだろうから、
先生の診断を受けてから入院までの3週間の節制のおかげだろう。
ちょっとだけ自信がついた。
あっ、数値を聞くのを忘れちゃったな。

「血圧が高いですね。薬で少し下がりましたが、まだまだです。こちらも薬を追加します。」

親父もずっと血圧の薬を飲んでるからなぁ。

「尿のタンパクですが、これは糖尿病だけの影響ではないかも知れません。糖尿による腎臓への障害は、長い年月を要するものですから。今のところ腎臓機能は正常です。でも、タンパクが出ています。ネフローゼの可能性があって、ステロイドという薬が効くタイプと効かないタイプがあります。後者の場合は残念でした、なんですが。いずれにしろ、詳しく調べるためには生検が必要ですので。今すぐというわけではありませんが、検査をしたほうが良いと思いますよ。」

そっか。生検はブツリと針のようなものをさして、内臓の細胞を採取して検査するってやつだ。中島らも「今夜すべてのバーで」という作品に、肝臓の生検の描写がある。それを読んで以来、生検と聞くと及び腰になって逃げ出してしまう。腎臓は放置しておけば人工透析だし。ま、覚悟を決めるか。
でも、こんな会話を公開しちゃったら、もう生命保険とか医療保険には入れないなー。どこか製薬会社のスポンサーとか付かないだろうか。

「食事はどうですか? 足りますか?」

ぜんぜん足りませんよ。でも、3単位(240kcal)多めにしていただいたこと、
食事のたびに感謝をしております。ほんと。でも、米をもっと食いたい。
ところで先生、ブログは見ましたか?

「あのですねー、実名はやめてくださいよぉ。」
あははっははは。笑ってスルー。
それどころか、先生の顔写真を撮影しようと思っていたのですが。
「やめてくーだーさい」。逃げられた。
患者の軽口にも付き合ってくれる良い先生だ。

   ※7月11日以降、匿名表記になっています。ご了承ください。

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◆昼食。百点。

改めて昼食。
わかめご飯、鶏肉のポン酢大根おろし、ホウレンソウおひたし、キウイ。
肉である。しかも好物の鶏肉である。酢の味付けも好き。いいね。
誰だ? 俺に中央病院のメシはうまくないよと吹聴した奴は。
やはり現場に行くことは大切だ。
自分の目と耳と舌と感性で取材しなければ、真実には出会えない。
廊下に張り出してある献立表を確認すると、
常食(カロリー制限の無い皆さま)は鶏が豚肉で、カボチャ煮が付いていた。

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◆鶏肉おろしポン酢。うめー。

昨日の連続採血はイヤだったが、
ある意味でイベントみたいなものだったので退屈しなかった。
今日はとくに検査もないので、単調な一日になりそうだ。
昼食後、昼寝をしてみた。15分くらい。
13時過ぎ。シーツ交換。二人がかりで、てきぱきぱきと交換していく。

13時40分、敦賀さん来訪。いつも母親のことを聞かれる。
「神戸こむぎ館」のパンをいただくも、食事制限中ということで泣く泣く返却。
中央病院の1階売店に「神戸こむぎ館」のパンが並んでいる。
先々週、点滴のために毎日通院していたのが、そのときにハマってしまった。
お昼はチーズサンドとハム玉子サンドばかり食べてたのだ。
11時ころ入荷するようだ。おすすめ。ハコダテ150でも紹介されている。

14時、糖尿病教室。
昨日お話をした管理栄養士のTさんが講師。

腹八分と言いますが、今は腹七分が常識です。八分は古いです。」
そうなんだ。やはり飽食の時代だからか。

「仏壇のおやつから見直しましょう。お亡くなりになった人の好きだったものをお供えしていると言いますが、実際にお供え物を食べるのは私たちですから、かならず自分の好みの菓子を買って供えているはずです。」

なるほどね。俺も墓参りに行くときは、マドレーヌとかレモンケーキを買うもんな。
墓の中の祖母さんが好きだったかどうかに関係なく。

「糖尿病の治療にはストレスをためないことも大切です。人生はなるようにしかなりません。食事療法をがんばる。そして、たまには自分にご褒美をあげる。2、3日で終わるものではありません。食事制限とは、これから一生付き合っていくんです。一日でも長く続けられるようにしましょう。」

これは昨日、外舘さんとみっちり話し合ったことだ。
がちがち厳密な食事制限には、おそらく長続きしないだろう。

「糖尿病に良いアルコールはありません。基本は禁酒です。」
よく焼酎は良いんだよ、とか言うよな。あれは飲んべえの言い訳です。

14時40分、病室に戻ると雑誌の入った袋が。
なんだなんだと中を探ってみると、
ハコダテ150のお仲間(アニキ的な存在。姉御か。)である洋梨さんの名刺が。
さっそくメールで留守を詫びる。夕方、洋梨さんからの返信。

 > 最初は熊田曜子、高岡早紀などのエロ本を差し入れようと思ったのですが、
 > 治療に差し障りがあってはいけないと思い、刺激の少ない雑誌にしました。

あのね。いや、もう、ありがとうございます。
でも、その程度のエロ本じゃ刺激になりませんから。ご安心を。何を?

15時、今日は男性の入浴日。昼間からお風呂。病人の特権だ。
蒸していたのだが、風呂上がりはすっきり。
看護師さんに明日の外出許可をお願いし、主治医の許可をいただく。
17時、血圧測定。146の94。お、まともだ。でも、あんまり体調変化なし。

17時半。もう晩飯。
んんんんんんんん? どう考えても量が多いような。
メシの盛りも多いし、皿数も入院後最大だし。食べて良いのかな。
ご飯を残したほうが良いかしら。いやでも、ご褒美かも知れんし。
急に「あっ、これ違います」とか言われて、持ち去られないだろうか。
「食べちゃったんですか。あーあ。」とか言って呆れらのもイヤだ。
そんなことを考えながら食べていたら、あまり味わえなかった。だが、満腹。
真相はいかに。まぁ、もう食べちまったが。

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◆ビールを500缶で2本はいける。多いでしょ。どう見ても。

18時半、ちょっとずつ断片的に書いておいた今日の日記を、
ひとつにまとめる作業を始める。毎晩、これに時間がかかっている。

メールチェック。やはりハコダテ150仲間のぷーさんからメール。

 > 退院後はスリムな高山さんになってるんでしょうか?

どうなんでしょうか。
このくらいの食事制限だと、2週間で3kg減くらいじゃないだろうか。
たぶんですね、10kgくらい痩せても、あんまり見た目は変化ないかと。
少し俊敏になっているかも知れませんが。

あとは洗濯して眠るだけ。
20時、おお、眠くなってきたよ。明日は外出だ。楽しみ。

【7月11日、一部改訂】

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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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