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7月15日(木)【リロード】

(あ、晴れた。よし気分はよい。書こう。)

慢性高血糖症(糖尿病)による入院十二日目。
函館中央病院の糖尿病クリニカルパスに基づく入院体験の記録。
※以前の日記で「クリティカルパス」と誤記していた。

お爺さんが退院した。木古内の人だった。
長かったのだろうか。看護師さんが、何人も見送りの挨拶をしていた。
キャラメルが好きで、くちゃくちゃと食べていた。
僕のキャラメルコレクション(50種ほどある)を差し上げようかとも思ったが、
賞味期限も切れているので、それはやめにした。

午前中は「海藻おしば」作品の仕上げ作業。
市立はこだて幼稚園の園児と保護者ががつくったものだ。
幼稚園に電話をして、午前中には完成するのでと伝える。
看護師さんが、これ海藻なの? と驚いていた。
ちょうだいと言われるも、そりゃ無理だ。協会の講座に参加してくれ。

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◆仕事部屋から工房に変身。つーか、病室ですから。

向かいのおじさんと、また病気の話。尊厳死の話。医療制度の話。
おじさんは検査のために、朝食は重湯で昼食は抜き。
しきりに、豪華な食事だと嘆いていた。そのたびに笑う。

昼食、なんと八宝菜が出やがる。
タケノコだらけだ。本来なら皿ごと食べない。
しかし、憎むべき空腹は、俺に28年ぶりくらいに八宝菜を食べさせた。
とろりとした汁に、少しタケノコの味が漂っている。
くそ。こんな状況でなければ、お前なぞ食べてやらないのに。
きっちりタケノコは残して食べ終える。
なぜ、こんなにタケノコと八宝菜を恨むのか。
それは小学校1年生のときの給食(日吉ヶ丘小学校1年1組にて)にさかのぼる。
その日の温食は八宝菜だった。そういや、当時は米飯給食は週1回しかなくて、
あとはどんなおかずでもパンを食わされていた。いびつな話だ。
で、八宝菜。当時まだ標準体重以下で、やせていた俺(ほんとだって)。
なんとなく最後に残った八宝菜。
そして、カップの底にごろりと鎮座した大きめの物体。
先割れスプーンにて突き刺し、そいつを口に入れた。
(当時、隣の席の好きな子にスプーンの持ち方が変だと言われたっけ。嫌なことばかり思い出すなぁ。)
ひとかじり。
ぐぇー、えろえろおろおろおろげろげろげー。
この話をすると確実に鳥肌が立つ。思えば、あれがタケノコだった。
口中に広がった不気味な甘い汁。よくあんなものをみんな食べるもんだ。
俺の繊細な味覚には、まったく合わない。
ということで、タケノコが食べられなくなった。怨嗟。

13時10分、看護師詰め所に寄って外出許可証を受け取る。
「今日の教室は大丈夫なのかい?」と今朝の看護師。
「1回受けたコマなので。」
「ぜんぶ覚えた?」
「あー、もちろんですよ。」
「帰ってきたら小テストします。」
ここは職員室か。
緊張すると、その場に順応するまで汗が噴き出すたちで、
しかも、あっ汗が流れているのを見られている、と思うとさらに汗が出る。
職員室は、そんな汗が出る場所だった。
今でも仕事で学校の職員室などへ行くと、ちょっと気圧される感じがする。

お散歩に出発。
電車通りを真っ直ぐ函館駅方面へ。
昭和橋を渡って、合同庁舎の手前で右折。新川町の広小路を歩いていく。
13時40分、丸山靴店。新調の靴にはきかえる。防水スプレーを買う。
事務所に向かって出発。
まだ靴が慣れないので、これまでと違う場所に力がかかるような気がする。

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◆若松町に先月オープンしたお店。星野さんと「REA」のスペルが違うんじゃないのかと話していたが。なにか意図があるんだろうか。

事務所に到着する手前で万歩計を確認。
あれ、1800歩? そんなはずない。設置箇所が悪かったみたいだ。
海岸町の事務所。
俺の車は、潮風と西日にあてられて、順調に白く変色していっている。
やっぱ、エネオスのコーティング洗車は、赤い車にあわないな。
今年も、また磨いてもらわなくちゃダメかもわからん。

事務所で星野さんと麦茶。ラッシーをからかう。
青函博(1988年)の報告書をあげつらう。
15時、そろそろ出発しなければ。
こんどは腹の真ん前に万歩計を取り付ける。

国道5号(国道の場合は「線」が付かない)から、西警察署のある松代通り。
中の橋を渡り、公園通り。共愛会病院の前を歩く。
ちなみに、この橋から下流で亀田川の様相は変化する。
川幅が広くなる真っ直ぐに流れる。大森浜(津軽海峡)まで直進だ。
これはつまり、かつてこの場所から、川の付け替えがおこなわれたということ。

向こうから浅黒い細面の青年が歩いてくる。
じっと俺を見ている。いやだなー。にらみ返す勇気もないし、
眼の焦点を合わせずに、ぼんやりした顔をして足早にすれ違おうとする。
いきなり、青年が立ち止まる。「高山さんですよね。」
誰だ。知らん。「わからないっすか」。
うーん、顔は見たことがあるが、なんか全体的な印象に違和感が。
「江差まで迎えに行ったのに。丸山さんと。」
あーあーあー、FMいるかのADだった人だ。
名前は覚えてないけど。「吉田ですよ。太一です。」(名前違ってたらゴメン)
彼は東京でAV製作会社に入社したと丸山くんから聞いていたけど。
「なに、夢破れて帰ってきたの?」
「そんなことないっす。」
「でも、だいぶガリっとやせたね。体壊した?」
(より)かっこよくなって、服屋のお兄さんっぽい。
だいぶ変わったから、気がつかねーよ。
「かるく胃潰瘍です。それに、親が服屋を開店しまして、アメリカからの仕入れがあるので、僕に手伝いをということで。」
あー、君はアメリカ留学してたんだもんね。ドットをダァットと発音するんだよね。
お店はどこなの?
「すぐ底です。この交差点の先です。」
あっ、あれかい? 「巴亜麻」って看板。前から気になってたんだけど。
「違います。『AKT』って言います。」
そうかそうか。ぜんぜん力になれないけど、がんばってね。
もうすぐ退院なので、飲みに行きましょう。AV現場の話を聞かせてください。
(彼がAV業界に就職していたかどうか、事実確認はおこなっていません。)

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◆これがお店。元「ロリアン」のあった場所。ロリアンと言えば、本通の実家の近くに「ロリアン」という店があったな。30年くらい前だけど。その隣は書店だった。よく「ドラえもん」の単行本を買った。道路を挟んだ並びには文房具屋があった。いまのダイソー山の手店がある交差点だ。あそこはヤマハかなんかのビルだったように記憶している。

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◆なんか貼り紙がしてあったので掲載しておく。

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会話ってのは、実践的に使わないと身に付かないものだ。
小学校への英語教育導入も決まった(んだっけ?)し、
そんなことより、思考や視差を深めるには、
やはり複数の言葉(と言葉が表現する文化)を学ぶべきだ。

俺は日本語(東京語)と函館語の会話、そして松前語の聞き取りしかできないけど。
それでも、都会と街と村の意識の違いなんてものを感じたり考えたりできる。

立ち話をしているうちに門限がせまる。
マリエールの裏手から丸井の向かいに抜けて病院到着。
約束の15時半。ぴったり。海岸町から病院まで4654歩。

病棟のエレベーターのトビラが開く。
15人くらいの妊婦が行進しながら出てくる。
あれ、ボタンを操作している妊婦さん、見たことある顔だなぁ。
あんきもさんだった。
「散歩に出かけるときも後ろ姿を見たんですよ」
そうだったんだ。

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◆春先の画像。2cmだって。今は2kgほど。性別は確認していないそうだ。きっと強い子が生まれてくるよ。写真うつりも良いし。

病棟のロビーが混雑していたので、仕事場じゃなくて病室で話をする。
15時50分ころ、主治医が回診。昨日のターゲスのデータを持ってきてくれる。
(詳しくは別項にて。)
あんきもさんを「カミさんです」と紹介すると、まんまと騙されていた。
悲鳴のような声であんきもさんに否定されたけど。
「血糖値はあかなり改善しました。ほんとうに、どんな食事をしてたんでしょうね」
と、先生があんきもさんに説明をしだす。あのね。包囲網をつくるつもりか。
「高山さんはオブラートに包んで言っても通じないので。」
「あっ、わかります。」
あきらかに、こちらが劣勢である。
ほんとにカミさんに叱られているみたいだ。
話題を変えるために診断書の件を聞いてみた。
「あっ、それはそのくらい時間をいただいてます。最大で2週間ということです。事務から書類が来るのに数日。すぐに書けるときもありますし、なかなか着手できないこともあります。」
この先は、書くべきかどうか迷ったが、お互い大人の発言だし。
僕がブログを書いていることは知っているわけだし。
きっと、ふだんはそういう発言はしないんだろうけど。
「だって、診断書を●●し●も、●●は●●●も●●●せん●●。お●●ですからね。」
あっ、やっぱ、俺はジャーナリストじゃないし、医師との良好な関係を築きたいので。
思わせぶりでゴメンね。
先生が帰ったあと、なぜか、あんきもさんが小声で「めちゃくちゃ美人ですね」と感想。
大声で聞こえるように言ったら、早く診断書を書いてもらえるかも知れないのに。

16時10分、泌尿器科から呼び出しがあったので、あんきもさんとお別れ。
ありがとうございました。それにしても、札幌に行ってしまうのは寂しいねー。

泌尿器科も美人医師なんだよな。いや、別に容姿には興味ないんですがね。
ただ、今日はメガネじゃないな、とか観察してみたり。
先生、なんとなく半笑いなんだよね。
「9月10日の入院ということで。それまでに、体重を減らすということでしたね」。
主治医の先生と「俺」に関する情報交換があったようだ。
「がりがりになるくらい痩せるそうですね」と言って笑っている。
なにを吹き込んだんだ。
「そら無理ですが、できれば6kgくらいは。」
医師と看護師さんから同時に、「聞きましたよ」と言われた。
「10日は仏滅ですね。」
「気にしますか?」
「いいえ、ぜんぜん」。ほんとは結婚式も仏滅にしようと思ったんだけど、
俺以外の全員に反対されたんだよね。創始改名もダメだと言われた。

まだちょっと先の話だが、次の入院は腎臓の生検査だ。
いろいろ説明を受けて恐怖が募った。
背中からぷすりと針を刺して、腎臓の細胞を採取して検査する。
僕の腎臓の症状(尿蛋白が4+)が、糖尿病によるものなのか、生まれつきなのか、
そういつに診断を付けるためのものだ。主治医は後者かも知れないと。
針は1本かと思ったら、15本くらい刺すんだそうだ。
「あの、タンスにぶつけた足の小指の痛さを5とすると、10段階評価でどのくらいの痛みですかね?」
入院説明をしていた看護師さんが、カーテンの後ろに駆けだして、
あきらかにベテランの看護師さんを連れてくる。
「局所麻酔をしますから、中学生でも耐えられる痛みですよ。そりゃ、針を刺すので痛いですが、我慢できないことはありません。」
はぁぁ、痛いってことか。胸が苦しくなる。
「手術室で検査をして、短くて半日はベッドの上で安静です。」
あっ、ということは。「あの、カテーテルとかも、怖いんですが。」
「バルーンですね。うん、じゃあ、病棟に電話してみるから。」
さっと聞いてくれて、尿瓶ですと教えてくれた。
「えーと、検査と入院の費用なんですが、おいくら万円なんでしょうか?」
これもすぐに電話をしてくれたが、担当者不在ということで明日の午後に確認することに。
入院日数がわからないから概算だという。
確認すると、これは手術ではなくて、検査だそうだ。
体に、というか、内臓にたくさん針を刺すのに。治療行為ではないけど。
ということは、生命保険がおりないんだな。
短期間の入院には給付金は付いてないし、手術見舞い金の対象にもならんし。
秋くらいには破産するかもしれん。そうなったら、健康な体で放浪の旅にでよう。

そして夕食。

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◆こんなにご立派な夕食だったので、思わず薬を飲み忘れたわけだ。いつもと違って、皿のレイアウトに手を加えた。3割くらい見た目の美味加減がアップする。

20時40分には、泣きながら寝てしまった。
7月15日(木)

さて、慢性高血糖症(糖尿病)による入院十二日目。
入院体験および治療の記録である。今日だけはフィクションだ。

体重測定101.4kg。
血圧測定156の85。

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◆朝食

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◆昼食

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◆夕食

17時40分、夕食を食べ始める。
18時、夕飯を食べ終わる。
18時40分ころ、食後の薬を飲み忘れていたことに気が付いて薬を飲む。
そう言えば、はて? 食前の薬を飲んだかどうか不安になる。
いつも置く場所に薬の空はない。ということは、薬を飲んでいないか、飲んで空を回収されたかのどっちかだ。病棟では飲み終えた薬の空を看護師さんが回収することで飲み忘れを防いでいる。

どうだったかなぁと記憶をたぐっているところに、
「高山さん、空を回収します。」と看護師さんが来た。
食後の薬の空を渡しながら、「僕は食前の薬を飲みましたかね?」
「そんなことは知りません。飲んだか飲まないかさえ分からないんですか?」
まぁ、飲んだか飲まないか記憶が定かではないから聞いてみたんだけど。
ここ数年、直近の記憶があやふやなことが多くて。それも特に重要なことが抜ける。
「あの飲み忘れたままにしたことは、これまでないと...」
「いえ、そんなことないですよ。2回目ですよ。」
ぴしゃりと言われる。そうだったな。
で、薬の飲み忘れシステムがあるから、
食べ始めているところで慌てて薬を飲んだことは、2回以上あった。

食事を目の前にすると、早く食べたいという意識が盛り上がってしまう。
恒例のメニュー写真の撮影も、2〜3度、忘れそうになったこともあった。
それにしても、ぴしゃりと言われてしまった。僕は怒られたんだろうか。それは曲解か。
まともに薬さえ飲めない僕に、叱咤激励をしてくれたのだろうか。
よくわからない心持ちになってしまった。
でも、僕は薬を飲んだかどうかについて、看護師さんに聞くしかなかったんだ。

うん。これは質問の仕方が悪かったんだろう。
「では、僕は薬の空をお渡ししましたか?」
「もらってないですよ。」
じゃあ、まぁ、飲んでいないんだろう。
それをチェックするための空回収システムなんだろうし。
ただ、その素晴らしいシステムも、記憶のあいまいな患者がボタンを押してみても(質問をしてみても)、そのボタンの押す角度や時間が異なれば効力を発揮しないようである。多くの人にとって簡単に使いこなせるボタンでも、それをうまく押せない人もいるかもしれない。俺が、そうなのかはわからない。入院も十日を越えて油断したのかもしれない。このまま退院しては、薬を飲み忘れて血糖コントロールに失敗するかもしれない。糖尿病と記憶障害の関係ついては、明日の回診で主治医に聞いてみよう。

はーー、でも、俺、入院して始めて暗い気持ちになったなぁ。
動悸がする。胃が痛い。表情が沈む。酒を飲みたい。逃げだしたい。
悔しいなぁ。悔しいなぁ。悔しいなぁ。悔しいなぁ。悔しいなぁ
俺、もし脳の血管でも破裂して、動くことも話すことも不自由になって、
でも、意識や思考は鮮明で、
自分ではどうしようもないってことだけは把握できる状態になったら、
自殺を望むだろうな。そればかり考えるだろう。
そして、自死さえも不随の状態では実行できない悲劇。この世でいちばんの恐怖。

早く退院したい。

今日はもう書けない。
楽しいことがたくさんあった日だったが、それは明日、空が晴れていたら書くことにする。

薬を欠かしてしまうほどの忘れっぽさだから、
明日にはきっとすべて忘れてるだろう。



※この文章はフィクションです。現実の人物・団体などに一切関係ありません。
7月15日(水)

かくなる上は、糖尿病(慢性高血糖症)の入院治療十一日目。
函館中央病院でお世話になっています。あと4日で退院だ。

6時起床。昨夜は、ちょっと遅めの就寝だった。
雨降り。薄暗い。風があるので窓を開けられない。
今日はお散歩に出かけられないなぁ。
原稿書きながらの貧乏ゆすりが運動になるのかしら。

体重測定101.4kg。やはり朝の便通なし。
入院十日目でようやく3.2kgの減量。たった3.1%の減少率。
ようやく1989年当時の消費税導入当時の数値に。
スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・ハンガリーでは消費税率25%だという。
俺の体重減少率はそれでも足りない。
ちなみに、5000万円を超えて1億円以下の相続がある場合は税率30%。
俺には縁のない話ではあるが。

7時、採血。
あっ、この看護師さんは。
「たぶん大丈夫だと思うんですけど...」。
細い針で痛くもなく失敗もなかった。不安な会話を笑える精神を持っていて良かった。
血圧測定156の101。
血を抜いたので体重減ったかと思い体重計に乗る。
ま、7ccで減るわけなし。

朝食。7時半。
ご飯、味噌汁(とろろ昆布)、白菜おひたし(だし醤油)、きゅうり酢の物、納豆・きざみネギ、牛乳。

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◆入院食で初めての納豆。納豆ほどうまいものはない。大粒が好き。

昨日、着手しかけていた原稿の続き。
お隣の爺さんが退院するようだ。
「もっと自分でできるようにならなくちゃだめよ」と看護師さんに励まされていた。

9時20分、血圧測定131の83。トレビアン!

「ちょっと体重が増えましたね。」
「えっ、そんなことはないですが。確かに昨日は便秘で600g増えましたけど、今日は一昨日より200g、つまり800gの減量なんですけど。」と色めき立つ。
どうやら、寝ぼけて記録用紙に書き間違えたようだ。
(あとでチェックしたら書き間違えてなかったけど。)
「みんなで、この食事で増えるんだとしたら、外出したときに...って話してたんだよ。」
なんてことだ。ショック。やっぱ基本的に信用されていないんだな。
ま、信用しにくい体型ではあるが。

9時半、本日2回目の採血。担当看護師のSさん。
ほとんど痛くない。早いし太めの針だけど。
「体重、減ってますので。」と言うと、さっき聞きましたと笑われる。
採血の後で体重計に乗ってみる。102.8kg。
メシは1.4kgもあるんだ。水も飲んでるとは言え。
宿便なんぞを抱えている皆さまは、出しちゃえば3kgくらい減るんじゃなかろうか。
体重を減らすの楽しくなってきたなぁ。でも、やりすぎると早々に落車するんだよな。
よく言われるのは1カ月で2kg。俺は3kgくらいを目標にしても良いかもね。

10時前、1階の文書受付窓口に。
生命保険の診断書を書いてもらうための手続き。
「退院した時点から診断書を書きますので、お渡しまで1週間から2週間ほどいただきます。」
うぇっ。そんなに時間かかるんだ。入院前に書類をそろえた意味があんまりないね。
保険会社は速達で送ってきてくれたのに。2週間後か。
「診断書をお渡しするときにお支払いとなります。」
入院費ではなく、診断書代ってことだな。たぶん。いくらなんだろう。
こちらも事務手続きがあるから、支払いを2週間くらい待ってもらおうか。
あっ、私物のクリアファイルを回収されちゃった。

病院って、事前に費用を言ってくれないよね。
CTはおいくら万円、レントゲンはいくら、この注射は何百円とか。
ま、いちいち言っていたら、面倒とは思うが。
ただ、高額になる検査だけでも、こちらから聞かなくても教えてほしいものだ。
例えば、内科の外来初診日の請求は17,180円(保険点数5,725点)だった。
国保30%自己負担の金額である。
病院慣れしていないと、なんぼほどお金がかかるのかわからないものだ。
幸い函館中央病院は、みちのく銀行・北洋銀行・ゆうちょ銀行のATMがある。
いったん自動精算機で請求額を確かめた上でキャンセルボタンを押して、
ATMでお金を引き出してから、再度、自動精算機で支払いを済ませた。
入院費も診察室では教えてもらえなかった。
「おいくら万円でしょうか?」と、入院の説明をしてくれた外来の看護師さんに聞いて、
ようやく内科外来窓口から、あとでお知らせしますと言われた。
(このときは、たまたま担当者が不在ということで、あとでfax.してもらった。)

医療関係者にしてみれば、ひじょうに細かくて小さいことかも知れないが、
いまのお寒い時代、僕もふくめて生活の余裕などない者にとって、
病気も治療も気になるが、それと同じくらいの切実さをもって医療費を気にしているのだ。
ただ、医療費を聞いて、治療や通院をあきらめるのも切ないことだが。
予測できない医療費を心配して、病院へ行くことをためらっている人も多いだろう。

最近、ある病院で働いている人(医療事務)にインタビューしたとき、
「患者さんが医療費への不安を持っているのは確かですね。最近は、ジェネリックでお願いします、と言ってくる患者さんが確実に増えていますから。」
と話してくれた。
昨日のブログ記事で紹介した文庫本『糖尿病は専門医にまかせなさい』の中で、
「ひと言でいうと『安い薬』だ。(中略)私は一切ジェネリック薬は使わない。糖尿病治療は薬が勝負だ。(中略)薬だけはベストのものを使い続けたい。初めに開発した製薬メーカーの薬のほうに私は信頼感を持っている。」(154-155pと)と書かれていた。
いかにも専門家の言葉だなと思った。
まぁ、東京銀座に医院を開業している医師だから言えることでもある。

もうひとつ気になったのは、この医師の言葉から類推すると、
ジェネリック薬ってのは、効果が低かったり不安定だったり、
薬としての品質が落ちるのだろうか? それとも、そんな気がするってことか。
最新の薬ではないことは確かであるが。
こうも書いてあった。「(ジェネリック薬の)公定価格はオリジナルよりも三〜五割安い(中略)薬局などへの卸価格は、公定価格の半分以下のことが多く、薬局などでもジェネリック薬のほうが利益が出る」。
開発も営業も「後発」であれば、そういった販売手法をとることも有るのかも知れない。

10時半、昨日のトラブルの件で川嶋先生から電話。
けっこう怒っている。先生は研究者であると同時に
役所の人間(北海道水産試験場の場長を歴任)だったわりに役人に厳しい。
「驚きましたね。机の前にいるだけの典型的な役人なんだな。
 なんにも勉強していない。いまさら、海藻おしばを禁止などと。
 いちど、渡島支庁へ話し合いに行かなくちゃならんと思いましたよ。」
そうですね。ただ、僕も道新の校閲責任者を経由して聞いた話なので、
渡島支庁の水産課とは直接やりとりしていませんから。
抗議のニュアンスをふくんだ文書は提出したので、少し待ちましょうか。

11時前、主治医のWs先生の回診。今日は病気の説明。
これは2週間の糖尿病入院(血糖コントロール)における
クリティカルパス(治療の工程表、治療計画)の手順のひとつ。
病室で患者と対面しながら、種類を仲立ちに病状を解説してくれる。
いろいろ会話をしていたが、ここでは煩雑になるので箇条書きで記録しておく。

【病状】
◆2型糖尿病です。
◆食事療法で血糖コントロールが改善しています。
 (運動療法は腎臓の診断が付いていないので開始せず。)
◆腎臓機能に問題はないが、尿蛋白の原因に診断が出ていません。仮に腎臓の合併症が進行すると、浮腫や肺水腫が生じる危険があります。
◆眼の合併症は生じていません。
◆自覚症状はありませんが、腱反射の低下などから末梢神経障害の存在が示唆されます。
◆水虫に注意が必要です。治療中。

【治療の優先順位】
(1)良好な血糖コントロールの維持
(1)良好な血圧コントロールの維持 ※同率1位
(3)血中脂質の改善(悪玉コレステロールを下げる)

【現在必要な治療】
◆糖尿病の一般的な食事療法
◆降圧剤
◆塩分制限
◆経口血糖降下剤
◆高脂血症薬
◆禁酒  という気持ちで酒量を減らす。(笑)
◆特殊な食事療法(蛋白制限) ※腎臓の診断が付いてから。

「今朝の血液検査の数値ですが、やはりかなり良くなっていました。糖尿病の薬を減らし、運動療法はせずに食事療法だけで血糖値が下がっているということは、いままでの食事はなんだったのかってことです。」
入院前の散々な食生活は包み隠さずに(じゃっかん増量して)伝えたので、
どうやら症例として興味深い(?)と判断されたようだ。
医師・看護師・管理栄養士などが集まる糖尿病の検討会みたいなもので、
あまたいる糖尿病患者の中から検査対象になったという。
「みごとに当選です」。嬉しくないわ。
いや、できれば、その場に参加して、どんな話をしているか聞きたいところ。

11時15分、すっかり忘れてた。
看護師さんが病室まで来て採血。手の甲。ちょっぴり痛い。

11時20分、函館大妻高校の外山茂樹校長先生が病室に。
目標体重は69kgなんですと言うと、それは無理じゃないかな、と言われた。
まぁ、同感です。90kgだな、とも言われるが、もうちっと減らそうかと。

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◆こちらは大妻高校福祉科オリジナルグッズだ。

学校にあった古いピアノの話。
食物健康科棟のカフェスペースに飾ってあったのを、
横浜にある工房へ運んで修理してもらっているとのこと。
このピアノ、もしかすると明治時代のものかも知れないらしい。
大正末期、初代校長(外山ハツ)が横浜で買い求め、函館へ運んだらしい。
横浜はペリーの来港、そして開港をきっかけに、楽器産業が発達した土地だという。
開港つながりの函館で、その横浜のピアノが残されていた。
もしかすると、あちらの博物館で所蔵されているピアノよりも、
製作年代が古い可能性もあるらしい。ロマンを感じる話だ。

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◆とあるライブ音源CD。さっそくiPODに入れておく。

「まだまだ、がんばってもらわないといけないから。しっかり治すように。」
ありがとうございます。学校の百周年記念誌までは執筆したいと思っています。

11時45分、校長先生を見送ってから昼食。

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◆カレー! やっぱり嬉しい。まるでガキだ。

カレーを楽しみながら、たまたま耳に入ったマイケル ジャクソンの「The Way You Make Me Feel」を聞いて、イントロが「函館イカ踊り」にそっくりで驚いた。ちなみに、マイケルは1987年のリリース。イカは1981年だ。
きっと、もっと前に「いただき」した曲があるんだろうけど。

13時半、採血。
「痛いときと痛くないときがありますね?」
「痛みの神経に触れたときは痛いんですよ」とSさん。
でも、Sさんの採血は、あんまり痛くないんだよな。
神経をよけて刺す技術を体得してるんだろうか。
思うに、Sさんの場合、手順がきっちりしてるんだよね。
「手を握ってください。」
「少しチクっとしますよ。」(この声かけのあと針刺しまでに躊躇がない)
「手の先は痺れませんか。」
「はい終わりました。抜くとき少し痛いですよ。」
「2〜3分、ここをしっかり押さえておいてください。」(この最後の言葉で、注射跡の押さえつけを忘れない。結果、青くなって数日間跡が残るということがなくなる。)
あとは、不安げな発言や態度をしない。これも重要だ。
お任せするしかない患者の立場ではあるものの、そこは生身の人間である。
痛みは感じるし、なるべく痛くない方が嬉しいものだ。

14時、糖尿病教室。今日は食事療法の話。
出席者が順番に、入院前の食事と病院での食事の量について聞かれる。
「いやあ、俺はまともに食べてねんだ。酒はいっぱい飲んで、さらっと食うだけよ」
これ、俺じゃないよ。思わず声を出して笑う。
通っていると、妙な連帯感が生まれておもしろい。

15時半くらいに原稿アップ。もうひとつ書いておきたい。

16時、星野さんが来る。
病室でうしろから写真を撮られていることに気が付かなかった。
1階のドトールでおしゃべり。紅茶ごちそうさま。
アルハンブラ宮殿、レコンキスタ、観光政策、イザベラ バード、中央ふ頭、室蘭、谷地頭、共同通船、遊覧船の話など。
途中から副院長も来て、病院経営についての話など。
まぁ、あとは退院してから書くことにしよう、かな。
話こんでいるうちに17時を過ぎていたので、ちょっと焦って病棟へ。

採血。
晩ご飯前に入浴。ひとりで入浴するには広い浴槽でゆったり。
じゃっかんめまい。頭痛。ありえないことだが、寝不足かもね。

洗濯。なぜか、あと200円残っていたカードがエラーに。
乾燥機って便利だな。

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◆晩餐。水戸黄門を見ながら食べてみた。

17時半、夕食。
ご飯、焼き魚(塩サバ)、すまし汁、白菜浅漬け、ささぎのそぼろ煮。
飯を食べながら向かいのおじさんと病気話。
どうやら、医者から長くかかると言われたらしい。
午後から家族も来てたし。
技術畑を歩んできた人らしく、仕事の話など聞くとおもしろい。

夕食を食べ終えて、本日最後の原稿仕事。
30分ほどで終了。ほぼリライト作業だったので、かるく。
19時半、採血。右腕。まだ、もう1回ある。
食後、胃もたれ。食べ過ぎた感じ。二口くらい残しておけば良かった。

ハコダテ150のMLで、あんきもさんから衝撃のメール。
あぁ、見送ってばかりだなぁ。
函館で生きていこうと覚悟したときには、
こんなにちょくちょく悲しく寂しい気持ちになるとは想像してなかった。

最後の採血。無事終了。
看護師さんの「おつかれさまでした。」の言葉が嬉しい。

ブログ記事のまとめ作業。
書ききれそうもないので、いくつかのネタは明日以降にまわそうと思う。
今夜は新しいシーツで就寝だ。
でも、なぜかパジャマの交換がないなぁ。俺だけ。

外は雨だ。梁川町のネオンが滲んでいた。
7月14日(火)

いかにも、糖尿病の治療のために入院中。ここの亀。九日目。
この病院の正式名称は「無料又は低額医療施設 函館中央病院」という。

隣の爺さんが病室に戻ってくる。それで起きた。4時起床。
少しは落ち着いたのだろうか。ちょっぴりストレス素因。
まぁ、お互い様のご近所づきあいだし。

4時半から原稿書き。9時くらいまでにはアップしたい。
今日は天気も良くて暑くなりそうだ。

採尿。便秘。体重測定はまたあとで。
6時50分、看護師さんにうながされて体重測定。
その前にトイレに行くものの、出ず。ちくしょう。
本日の体重102.2kg。600g増量。昨日お散歩してないしな。
頭脳労働はカロリーを消費するけど、体重減少までには至らない。
100kgを切ったら、お祝いに焼き肉食べ放題へ行きたい気分だ。
(お酒じゃないところに注目すべきだと思うよ。)

隣の爺さんが、どうやらしきりに看護師さんの腹をさわるらしい。
「だめ。そこはお父さんのものだから。」
カーテンの向こうから聞こえてくる会話に、
窓際のふたり(俺と昨日入院したおじさん)が思わず笑い出す。
笑いが止まらない。なにしてんだよ。

朝日がまぶしい。
7時半、朝食。ご飯、味噌汁、温泉卵、煮野菜、牛乳。牛乳は昨日の残りを飲む。
入院前は1日1リットルだったけど。
牛乳もお米も仕事だからとずいぶん大量に摂取していたな。

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◆野菜は煮てしまうと、こんなもんかってくらい体積が小さくなる。

血圧測定147の83。
低いねぇ。いいねぇ。投薬前、頭痛かったな。

朝食後、いっきに追い込んで9時前に原稿アップ。
今日は腎臓の診察があるから、午前中の仕事はこれまでかも知れない。

9時、川嶋先生から電話。来月、腰の病気で入院するという。
しかも、ここ函館中央病院に。
「実は、いま中央病院に入院してるんですよ。」
「あらあらまあ。」と、いつものように川嶋先生は上品に驚く。
本当はすぐに入院と言われたらしい。
ただ、26日に北洋資料館の海藻おしば教室があるので、
その後でということにしたという。川嶋先生は今年で82歳。
さすがに、あんまり無理をさせてはいけない年齢だ。

10時、便通。30分で3回ほど通う。そのたびに出る。
最初は堅く、そして軟らかくなった。
くそー。これが体重測定前に出ていればなぁ。

まだ診察のお声がかからない。向かいのおじさんと世間話。
なぜか名刺交換。退院したら、おじさんの職場に行くと約束する。

昨日アマゾンから届いていた糖尿病の本をぱらぱらと読む。
「糖尿病」で書籍検索してみたが、出版点数は多いものの
意外なくらい(俺に)役立ちそうな本が見つからなかい。民間療法が多い。
そのなかで糖尿病の専門医が書いた本を購入した。

牧田善二著『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)
二宮陸雄・高崎千穂著『糖尿病とたたかう 専門医が書いた最先端の治療法と知識』(ベスト新書)

いずれも糖尿病治療の重要さ(合併症の重大さ)を知ることと、
必要以上の不安を取り除くことに適した内容を持つ書籍だと思う。
(不安が募ると病院から足が遠のくものである。)
どちらも治療に関する「新しい知識」を得ることが重要だと書いてあった。
患者自身さえも抱いてしまう糖尿病への偏見を霧消させてくれる内容だ。
いまや糖尿病は国民病となった。それならば、患者や家族に限らず
誰もが糖尿病について知るべきではないだろうか。
どうしても慢性化する病気だから、社会的な治療コストはかさんでいく。
予防医療の観点からも、「知る」ことは「防ぐ」ことにつながる。

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◆昨日、一森さんからいただいた包みを開けてみる。まろみのある茶でおいしい。

たぶん11時くらい。主治医の回診。
「やっぱり血圧がまだちょっと高いので、明日から薬を半分に割ったものを追加します。」
そうですか。頑固な血圧ですな。
「昨日、聞きそびれたことがいくつかあるんですが。」
「はい。どうぞ。」
「通院のきっかけになった膿傷の状態はどうなったのでしょうか?」
「血液検査の結果では、いわゆる炎症を示す数値は出ていませんから、体の中の膿は消えていると思いますよ。」
「じゃっかん、腫れがあった場所に違和感を覚えるときがあるんですが。」
「膿は消えても、そこに膿があった跡は残ってしまうんですよ。」
「わかりました。あと、血液検査で見つかった●●●●については、どういった治療をしていくのでしょうか。」
「耳にしたことがあると思いますが、●●●●●●●●を使った治療などがありますが、いずれにしても、まずは高血糖の状態をどうにかしなくちゃいけないので、その後になりますね。」
「退院後の外来診察日を決めておきたいのですが。1カ月後くらいでしょうかね?」
「そうですねー。あんまり時間をおくと、高山さんはまた食生活が乱れる恐れもありますから、最初は早い方がいいかなー。」
びたいち信用されず。でも、僕のような暴飲暴食による糖尿病患者は、
たぶん嘘つきばかりだから、信用すんなというマニュアルがあるのかも知れない。
つーことで、8月6日に決定。広島原爆の日だ。
「眼科で網膜症の検査を受けたとき、退院後に落ち着いたら、もう一度診察を受けてと言われているのですが。」
「あっ、それは勝手にどうぞ。いつでもかまわないです。」
くくく、たまに言葉の選択を間違えるんだよね。

けっきょく午前中は診察なし。
11時45分、お昼でございます。

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◆お醤油が2袋。どちらも使用せず。どんどん貯まっていく。お金もそうありたい。

塩豆ご飯、平べったい焼き魚、ほうれんそう、キュウリの梅酢、大根おろし。

13時、ようやく呼び出し。
腎臓は泌尿器科。待合室でしばし待機。眠くなって、うつらうつら。
40分後、ようやく診察室へ。
あれ、また若い女医さんだ。いや、べつに性別は関係ないんだけど、
主治医に続いてなので、ちょっと驚く。
診察台に横になって、はい失礼しますと、ズボンを降ろされる。
いやーん、どこまでかしら。...お腹の下まででした。
くまのプーさんパンツを脱がされることはありませんでした。
「なるほどぉ」。どこに納得したんだろう。
うつぶせになってエコーの検査。
「あれ(ぐいっ)、あれ(ぐいっ)、深いですね。」
(ぐいっ)というのは検査器具を押しつける描写である。
「その深いってのは、つまり厚いってことですか。ですよね。」
「そうですね。脂肪があって、腎臓がけっこう深い位置にありますね。」
「だんだん、浅くなってくる予定なんですが。」
「腎臓の生検のためには、背中から針のようなものを入れて、エコーの映像を見ながら腎臓に射し込んで細胞を採取するんです。腎臓は血管がたくさん集まった臓器ですから、出血のリスクがあるんですが、高山さんの場合は少しそのリスクが高いと思います。それに、針が届かないかも。いや、届くかな。」
正直、刺された後で、失敗しました、もう1回ってのはイヤだ。
「じゃあ、なるべくリスクを減らすように、脂肪を燃焼する努力をしますので。1カ月とか2カ月後にでも。」
「じゃあ、いまWs先生に確認してみますので。」
電話。オッケーが出たようだ。たぶん、「どーぞー」的な回答だろう。
「では9月10日くらいの予定で。木曜日に入院して、金曜日に検査をして、月曜日に退院というスケジュールになると思います。詳しくは、木曜日にもう一度こちらにいらしてください。」
「あのー、これは検査入院になるわけですね。」
「そうですね」。そっか。
検査入院だと生命保険は出るんだろうか。お金が続くか心配だ。手術だと給付されるみたいだけど。

13時55分、いったん病室に戻ってから、すぐに糖尿病教室へ。
今日は外部講師(糖尿病の専門医、らしい)の講義。実は楽しみにしてた。
内容は糖尿病とその合併症に関する基本的なお話。
ビデオなどより、生の説明の方が知識が頭になじみやすい気がする。
ただ、30分という時間は短くて、早口で一方的な講義になってしまっていた。
「話したいことは、まだまだたくさんあるんですが、時間が来たのでここまでです。」
せっかくなので、居残っていくつか質問。少し取材モードに。
「正常な人は、食後の血糖が基準値をオーバーしないんですか? それとも、オーバーしても、短時間で下がるんですか?」
「越えないんですよ。それが正常な状態なんです。」
「講義の最初に、『糖尿病』という病名は、病気の態を表していないと言ってましたね。僕も、その響きというか印象の点から、名称を変えた方が良いと思うんです。」
「医師の方でも、糖尿病と聞くと、甘い物を食べすぎた患者とイメージする人もいるくらいで。私は『慢性高血糖症』あたりが良いと思っているんですが。」
「糖尿病という名称は日本独特のものですか? それとも、やっぱり西洋医学用語の直訳ですか?」
「直訳ですね。『甘い尿』と呼びますから。病名については、この先十年とか十五年たったころには改称されている可能性はありますけど、今のところはこのままです。」
もっと話を聞きたかったな。

14時45分、病室に帰還。ふとベッドの上を見ると手ごろな大きさの箱が。
メモが挟み込まれていて、やはり「ハコダテ150」仲間のあんきもさんだった。
洋梨さんのときも留守をしてたし、どうも女性には見舞い縁がないのかも。

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◆スパイが隠し持っていそうな物体。

覗いてみたらカレイドスコープでした。
筒の先っぽが球面レンズになっていて、外の景色を織り込んだ万華鏡画像を楽しめる。
窓の外に向けて、しばらくの間くるくる回しながら覗きこんでいた。
たぶん、その姿は向かいの窓を小型望遠鏡でノゾキ行為をする男だったに違いない。
ありがとう。

和也さんから電話があって、入稿済みの原稿の内容でトラブル。
書いても気持ちがささくれるだけなので書かない。

15時半くらいかな。やはり「ハコダテ150」仲間で、雑誌「JAM」の小林さんが来る。
チーム(見るからに)不健康のメンバーである。と、勝手にいま決めた。
最初はまじめに病気のお話。だんだん話がよれて、家電製品の話とか、
ガンプラの話とか、公共広告機構の話とか、レコードの話とか、エスパーの話とか。
エスパーの話だけを書いておく。
僕の事務所の近くに「エスパー電機」というお店があるって話題
(小林さんが高校生のときお世話になったそうだ)と、
僕の自宅の近くに「エスパーB」というアパートがあるという話題。
それだけ。あっ、マイケルジャクソンとユリゲラーの話もした。
わざわざありがとうございます。

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◆お茶セットの差し入れ。入院してお茶長者になれそうだ。

仕事場、じゃなくてベッドに戻って、次の原稿に着手。
筆がのってきたところで晩飯の時間に。

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◆バナナは残しちゃいました。おやつに入らないのに。

ご飯、味噌汁、ブロッコリーとカリフラワー、パスタのサラダ、いも、鶏肉。
鶏肉料理うますぎ。なんか炭水化物が多い気がする。腹がふくれた。
飯のあと、お向かいさんと保険の話。ガン保険の素晴らしさを教えていただく。

原稿の続き。19時半こと脱稿。ギリでした。
小樽の妻に電話。今日はマンモグラフィ検診を受けたそうだ。
おっぱいをずいぶんと引っぱられたらしい。
押しつぶす器具がスケルトン(透明)素材で、押しつぶされていくおっぱいが、
よくよく観察できたとのこと。そんなに痛くなかったと言っていた。

明日は例のターゲスだ。採血7回。
鼻血ならすぐに出るんだけどな。鼻からぽたぽた採血ってダメなんかね。
ごりごりと仕事をすると疲れるなぁ。やっぱり。
7月13日(月)

もしかしたら、糖尿病治療のための入院八日目。
函館中央病院にて。

5時半起床。強めの雨。風もある。薄暗い。寒い。
採尿。出だしはそらしてコップ半分くらい。
体重測定101.8kg。減った。嬉しい。

6時10分、ぼちぼち原稿をかいていたら、
看護師さんがベッドまわりのカーテンを開けるなり驚いていた。
「寝てるかと思ったら、目の前に背中があったから。」
夜中、窓を閉めてくれたらしい。
花かごを見て「ほんもの?」と問われる。「彼女から?」
あー、人生の先輩からいただく、こういうセリフって久しぶりだな。
(この看護師さんはちょっとだけ年輩なのだ。)
この気恥ずかしさが懐かしい。

朝食までに原稿はアップできず。いつもは平気で締め切りを破るのに、
なんだろう、この焦燥感。天気が悪くて風に当たれないから。

例のごとく顔と頭を一緒に洗っていたら、さっきの看護師さんが
「坊主頭が流行っているの?」と聞いてくる。
いや、俺は頭髪を諦めたときに、すっきりとやっちゃいました。
おしゃれ坊主じゃありません。ハゲなんです。ポジティブな。
髪が長いときも坊主になっても床屋代は一緒なんですよ、と言うと、
「あら、親戚の坊さんは奥さんに剃ってもらってるわよ。」
いいねぇ。病院で葬式坊主の話をする看護師。たいへん健全だ。

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◆朝食。やはり昨日から醤油が減塩になっている。

ご飯、煮野菜(ささげ・焼き豆腐)、味噌汁(大根葉)、牛乳。
今朝のメインディッシュである野菜の煮物には、数切れの焼き豆腐が入っている。
これ、数えて盛りつけているんだろうか。
「あら、加藤さん。それじゃあ、お豆腐が一つ多いわよ。」
「すいませーん。まだ慣れてなくてぇ。」
ってな会話があるんだろうか。ご飯はきっちり量ってあるみたいだが。

9時半、函館大妻高校から電話。校長先生からだった。
この電話を皮切りに、次々と仕事関連の電話がかかって来る。
病室もバタバタしていて、隣の爺さんが3分ごとにナースコールを押す。
10回くらいコールが連続した後、どこかへ移送されていった。

10時半、担当看護師さんから、今日の泌尿器科での診察は中止と聞く。
生体間腎移植の手術で休診だそうだ。明日改めて。

11時、病室にひとり新たな患者が入院。
これでこの部屋は満床。1週間前からいるのは俺だけ。
つらつらと思い出していたのだが、母方のばあさんが入院したとき、
旧市立函館病院の病室は8人部屋じゃなかったかな。
あっという間に死んじゃったけど。そういや、ひどい糖尿ですとか言われてたな。

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◆ホイル包み料理は無条件で特別感が増すね。

11時半の昼食。
ご飯、親子丼の具、野菜のホイル蒸し、マカロニとチーズのサラダ、バナナ。
入院してから、すっかりバナナを食べるようになった。
だって、こいつ、なかなかの目方ですから。食べなくちゃ食べなくちゃ。

このままだと原稿が終わりそうもない。
明日いっぱいまで〆切を延長してもらおうと和也さんに電話。
「あれ? 来週の月曜日でも大丈夫だよ。」
はら? そうなんだ。勘違い。今週末は退院でバタつくから、明日アップしよう。

13時8分。体温測定35.52度。血圧測定150の101。
下が高いのは、ぜったいストレスのせいだ。
胃が痛むし、胸は締め付けられるし、貧乏ゆすりを止められない。
星野さんから電話。午後から、またお見舞いに来てくれるという。
ありがたいけど、今日はちょっと落ち着かないかも。

14時、糖尿病教室。貝原益軒(「養生訓」の著者)をアニメキャラ化して、
進行役にしている。今日は合併症の話。
網膜症(失明)、腎症(人工透析)、神経症(足の切断など)。
どれもイヤだ。でも、俺は崖っぷちにいるわけだ。
小さなケガが、あっという間に壊疽へ進行してしまうらしい。
壊疽が進んだ傷口の写真を冷蔵庫のトビラに貼っておこうかしら。

14時半、教室から戻ると、入院1週間目の供述調書を取るとのこと。
取り調べに行こうと部屋を出かけたら、星野さんが来る。
ちょっと早いって。ロビーで待っていてもらって、俺は取調室へ。
この1週間で学んだこと、この先の目標、反省、退院後の生活設計、治療の方針など。
このブログにだらだらと書きつづってきたことを思い出しながら話す。
まだ、如何にして治療(食事・運動)を長続きさせるか。
その決定的な答えを見つけられていない。
月1回の診察と検査と栄養相談は、医師と栄養士にお願いした。
これは治療を持続させるのに良いファクターになりそうだが、
俺が、行きたくなくなってしまえば、はい、それまでよ、だ。
良い線はいっているが、まだ絶対ではない。
あと、もう1週間ある。入院中に画期的な方策を見つけたいものだ。

15時、ずいぶん星野さんを待たせてしまった。まず仕事の話をざっくり。
それから、あずかってもらっている亀(緒川ラッシー)の様子。
今日は星野さんの部下が、水槽の水を交換してくれたそうだ。ありがとう。
ブログの話。こんな冗長な記事を毎日読んでいただけているようで。
たとえたったひとりでも読者がいれば嬉しいものである。

星野さんが帰って、敦賀さんが来る。
仕事の打ち合わせ。今週末までに印刷納品しなければいけない。
「テキストはいつごろになりそうですか?」
いつものやりとりだが、冷徹な質問だ。うーんうーん。
「もし、夕方までに書いてもらえれば、すぐにデザインできるけど。」
あーあーあー、うーん、それはちょっと無理みたいで。ごめんなさい。
水曜日夕方の初校出しでスケジュールを組む。

とにかく電話が多い。そのたびに病室からロビーに走る。
落ち着かなくて、原稿がなかなか進まない。
向かいのおじさんと少し話す。
「冷蔵庫とテレビはけっこう金がかかるかい?」
「冷蔵庫は24時間で200円、テレビは1時間で120円ですよ。」
すらすらと答える俺に、おじさんがジョアを勧めてくれる。
うっ、飲みたい。
「ありがとうございます。でも、俺、糖尿で食事制限中なもんで。」
「そうか。そりゃ悪いコトしたな。」
このあと、しばし病気話。おお、うるわしき患者ライフ。
(眼鏡使用者が視力の悪さを競う、脂肪肝仲間がガンマを競うのと同義。)

17時過ぎ、主治医の回診。

「最初の4日間にしてもらった蓄尿の結果なんですが、あれはインスリンがどのくらい分泌されているかという検査だったんです。どうやら高山さんは、かなりのインスリンが出ているみたいで、膵臓はまだまだ現役みたいです。」

「そうですか。あいつは結構やれる奴だと思っていましたが、なかなかの実力なんですね。」

「たーだーし、その膵臓のがんばりをはるかに凌駕するほど食べたり飲んだりしていた状態なんですね。それに、肥満つまりメタボの状態であることで、インスリンの効きが悪くなっていることも血糖値を上昇させているようです。」

「痩せろってことですね。」

「はい。今までのように膵臓をフル回転させ続ける状態が長く続くと、さすがに膵臓も疲れて、ばりばり働けなくなりますから。でも逆に、体重を落としていけば、その分だけ薬の量を減らしていけるかも知れませんよ。」

希望の光が見えたような見えないような。
だってさ、目標体重は69kgだよ。あと33kgも減らすんだぜ。
幼稚園児ふたり分くらいあるんじゃねーの?
退院後はダイエット日記になるわけだな。

そうだ。昨日は靴を買ったが、体重計も買おうと思う。
いま持っている体重計はデジタル表示なんだけど。数字3桁なんだよね。
つまり、44.2kgとか60.5kgとか88.8kgとか、
0.1トン未満は100g単位まで計測できるんだけど、
俺のような体重だと、105kgとか103kgとか、いきなり1kg単位なんだよね。
なんか投げやりでしょ。お前らのような3桁やろうは、だいたいで良いんだよ。
って感じ。こんなところにも肥満の弊害はあるわけだ。

17時半、夕食です。

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◆たびたびお会いするキウイ。

ご飯、焼き魚(白身。タラかな?)、味噌汁(キャベツ)、春雨っぽいもの、キウイ。
朝の牛乳を飲み忘れた。明日は2本飲みだ。捨てる? まさか。

18時半、NCVの一森さんが来る。でかいテレビカメラとでかい箱を抱えて。
「お茶ならいいと思って。あまったら皆さんでわけてください。」
ありがとう。ナイス配慮。つーか、片手でそんなでかい箱をよく持てるね。

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◆でかい。プラモの箱にしては大きいと思ったんだ。

ロビーで今月20日から放送される「函館酒場寄港」の第4話を見る。
この時点では、放送枠(15分)の倍以上の長さに編集されている。
入院4日前、いきいきとがぶがぶ酒を飲む俺。
収録前日まで禁酒しており、それだけに酒がうまかったのでした。
それに、ずいぶんと良くしゃべっている。
これは、レポーターの仕事をしているのではなく、
ただただ本気で酔っぱらっているだけなのだ。楽しそうだな、俺。
病棟に大きなカメラを持ち込んだので、看護師さんに警戒される。
違うんです。違うんです。すいません。
声だけ収録するのにも、このカメラが必要なんです。

視線が痛かったので1階に移動。
録音に支障があるので、人の気配のない場所を探す。
けっきょく、とある暗がりで録音の準備。
なんだか、ヒミツ基地で息を潜めるガキのようだ。
ふたりとも笑いが止まらなくなる。
こういう仕事を病院でするのはやっぱり奇異だ。

今回は一森さんの台本をほぼそのままいただいてナレーションを録った。
快調に舌が回って、素早く終了。つーか、誰かに叱られる前に早く終わらせた感じ。
過去3回分の出演料みたいなものをいただく。6000円。
あー、楽しかった。でも、明日あたり強制退院させられないだろうか。
またも、ちょっと反省。秩序を乱す行為はよくないよね。

「10月以降は三平汁紀行とかどうでしょうね? 各家庭の郷土食を食べ歩くとか。」
「うわっ、ヨネスケみたい。大きなしゃもじをつくらなきゃ。」
えー、突撃となりの晩ご飯ですな。
それも楽しそうではあるけど、酒場寄港セカンドシーズンじゃダメ?
月2回の飲酒のうち、1回は仕事用と決意したのに。
番組が終了しちゃったら飲酒回数が月1回に減っちゃうよ。
まぁ、その辺は退院後の折衝ということで。

19時40分、浴室で足を洗う。これも糖尿病の合併症対策なのだ。
20時、書きかけの原稿はいったん止めて、ブログ記事の整理。
時間がない。早く早く。
明日、早起きして仕事の続きだ。
おかしな話だが、今日もおもしろい入院生活だった。
仕事は胃が痛かったけど。
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プロフィール

高山潤
函館市および道南圏(渡島・檜山)を拠点に活動するフリーランスのライター、編集者、版元、TVディレクター、奥尻島旅人。元C型肝炎患者(抗ウィルス治療でウィルス再燃、インターフェロン・リバビリン併用療法でウィルス消滅で寛解)、2型糖尿病患者(慢性高血糖症・DM・2009年6月より療養中)。酒豪。函館市(亀田地区)出身、第一次オイルショックの年に生まれる。父母はいわゆる団塊世代。取材活動のテーマは、民衆史(色川史学)を軸にした人・街・暮らしのルポルタージュ、地域の文化や歴史の再発見、身近な話題や出来事への驚きと感動。詳しくはWEBサイト「ものかき工房」にて。NCV「函館酒場寄港」案内人、NCV「函館図鑑」調査員(企画・構成・取材・出演・ナレーション)。


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